約40年前に書かれた本「先任将校 ― 軍艦名取 短艇隊帰投せり」。
動機は忘れたが興味を感じて図書館を訪ねた。そこには無く道立図書館から取り寄せてくれた。
第二次大戦中、軍艦「名取」はフィリピン沖で魚雷攻撃を受けて撃沈された。生き残った百九十五名が3隻のカッター(大型の手漕ぎボート)で六百km離れた陸地を目指して成功した記録である。
海難事故での漂流記は少なくはないけれど、ほとんどは偶然救助されたものである。
食糧も飲み水も無く各自の時計は濡れて用を足さない。コンパスや航海要具も無く狭いカッターの中で大勢の人が押し合いへし合いしている。
その状況の中で優れたリーダーと著者を含めた数名の士官達が知恵を出し合い毎日10時間漕ぎつづけ、13日後にたどり着く話である。
リーダーは27歳の大尉。
全員10代から20代の青年達が自力で極限の困難を克服する過程は感動的だ。
ともすれば明るい見通しが見えない日々が続くと不安や不信の念にかられて反乱の気配も出てきたりするが、賢明な言動により希望を持たせて過酷な運命を切り開いていく。
私たちの先輩達は若い頃からなんと素晴らしかったかを知る本でもあった。
その後筆者は海難事故を調べて死亡者の多数が事故そのものにもよるが、前途を悲観しての自殺と仲間の争いによるものが多い事を知る。
そして自身の体験を振り返り人間はビタミン、カロリーの不足による肉体的条件では、世間の常識を上回って生きることができる。
その反面、自信を失ったり失望したりの精神的ショックにはきわめてもろいと語る。
やはり、そうなのだ。
強く明るい心をもつことなのだ。コロナや年齢など気にしない。気にしない。
アッハッハ(笑)