八月、お盆も過ぎた朝、ケイタイが鳴る。
「昨夜主人が亡くなりました。」
ダンスサークルでご一緒のAさん。
ご主人は私より十歳年長。サークル歴も大先輩で新人の私にはご夫婦仲良く踊る姿はとても美しく見えた。
役員としても長くお手伝いをされ、気配りと知識の豊富さで多くの会員から慕われていた。
4年前役員交替で不慣れな私にユーモラスに細かな指導も頂いた。
2年程前から体調を崩し休会。
Aさんはご主人の「行っておいで」に励まされてサークルを続けていた。
時折病状が悪くなり、不安気な顔のAさんに私の仕事の内容を話し「最後まで面倒を見るから」の冗談で気が軽くなったが「何でも相談するからネ」と明かい顔になられた。
そんなある日「歩くのが大変になった」と慌てて、ケアマネージャーと同行し介護申請の手続をしたり、ご主人が楽しみながらしていたという庭の樹々の剪定をした。
2Fの寝室から水廻りのある1Fへ、ベットを移したのは3週間前。
歩きづらそうではあったが昔のままの笑顔。
サークル時代の楽しかった思い出話もできた。次の日「おかげで随分元気になったの」と。
車イスやドアや階段のリフォームは先の事と安心もした。
そしてこの突然の電話。
大急ぎで葬儀社の手配、遺体の引き取りも打合せた。
会場を「退職してから随分経つから」と小さなホールを希望されたが、溢れる人達がお別れに来られた。
人の真価は棺を蓋いて定まると云われるがそれを実感できた。
生かされているこの時を大切にしなければと改めておもわされた。
” 一日一生 ”
おげんきですか通信 H29年初秋号 No.33より